柴犬あきとの生活 197
取れないっ!!!
あきが、ピアノの椅子の下に潜り込んでいます。どうやら、お気に入りのボールがピアノのペダルの間に挟まってしまったようです。
「あきちゃん、取れないの?」
『取れないの』
以前はボールがどこかに入ってしまうと、『取って、取って!』と努力せずに取ってもらえるのを待っていたあきですが、自力で取れるまで出来るだけ様子を見るようにしていたおかげで、最近は自分でどうにかしようと努力するようになってきました。
という訳で、今回も自分で取ろうと頑張り始めました。
お得意の手を使って掻き出そうとしています。
でも、なかなか上手く行きません。
何度も「猫パンチ」ならぬ「犬パンチ」を繰り出しましたが、思ったような効果はないので今度は口でアプローチ。
『も~取れない~』
どうもパンチでどんどん奥に押し込んでしまったようです。
取れる気配のないボールを眺めています。
困ったね、あきちゃん。
そこで、今度は舐め舐めアプローチ!
必死にボールの表面を舐めています。
でもね、あき。舐めても取れないよ?
流石に本人も気づいたようで、再度手で押します。
『もー!!何で取れないの~!!』
ここで、私の方をチラ見。
「あき、頑張れ!あきならできるよ!!絶対に取れる!!」
励まされて、逆に、これは当てにできないと分かったのでしょう。再び犬パンチ!
そしてまた口が出た!!
咥えたいのに咥えられない!!仕方なくまた手を使います。
『ねえ、取れないんですけど』
「頑張れあき!」
また励まして見ます。すると仕方なくまた犬パンチ。
『も~なんで取れないかな💢』
『えい、えい!!』
必死に左手で掻き出そうとしていますが、右手でしっかりボールを押さえ込んでいるという痛恨のミス!!片手で押して、片手で引いてちゃ絶対に取れないから!!
『ああ、もう腹がたつ!!!』
だから、右手どかして!!!あきちゃん!!!
私の心の叫びが通じたのか、漸く片手だけになりました。
もう、形相変わってるし!!あきちゃん、顔!顔!!!
『えいっ!もう、こっち来いっ!!!』
顔、怖いよ!!!顔直して、ほらっ!!
『もう、こっち来てよ~なんで来ないの?』
今度は上手に手のひらを丸めて、ボールをしっかり掴むようにしました。いい感じです!
ちょっと手前に転がった!と思ったら、気が早ってすぐに口が出た!
そして上手く噛めなかったので、また犬パンチで押し込んだ!!
あ~あ。せっかく上手く行きだしたのに!
本人もがっかりしたのか横たわります。
すると、またこっちをチラ見。
次の瞬間、ペダルをカプリ!
「あきちゃん、ペダル噛まないの!!」
『もう、もうもう!!!!なんで取れないの!!!💢』
あ、荒れてる・・・・
そしてボールをガン見。。。
そして、不意に上体を起こしてこっちを見ました。
『ねえ、さっきからそこでただ見てるよね💢』
「あき、どうした?何が言いたいのかな?」
目が怖いよ、あき。
『さっきから、ずっと見てて、手を貸してくれませんよね?見てるだけですよね?ずーっと見てますよね?ただ、見てますよね?💢💢💢』
「だってほら、あきが頑張ってるから、見てあげてるの。あきなら出来るよ。ほら頑張れ!!」
そしてまたペダルとガブっ!!!
あ~相当イライラしてる。
噛んでても何も変わらないと思ったのでしょう。再度手を使ってボールを取ろうとし始めました。
でももう、流石に限界のようです。
『ねえねえ』
おっ。戦法を変えて来ましたよ。
『ねえねえ。ねえってば』
グイグイ近づいて来ます。
『ねえ、ボール取って~』
ここで、可愛らしく私の手をぺろり。
ぺろぺろ舐めて、すっかりおねだりモードに。
はぁ。やっぱり無理だったかぁ。見ると、犬パンチでペダルの間にこれでもか!というぐらいギュッと押し込まれてしまっています。
私でもかなりの力を入れないと抜けないほどの押し込みかた。まったくもう。パンチしすぎだよ、あき。
キュッと掴んで引っ張りだし、ペダルの近くに置きました。
「ほら、あき取れたよ」
わーい!とすぐに噛むかと思いきや、ちょっと複雑な彼女。
頑張ったのに取れなかった屈辱感でしょうか?
漸くボールをハムハム。
「あき、嬉しくないの?」
「ボールで遊びたかったんでしょ?」
何だか小首を傾げているような。。。
そして、次の瞬間ボールを置いて立ち去りました。
えーっ!!!今までの頑張りと取れた喜びはどこへ?
もう、だったら自分で最後まで頑張れば良かったじゃない!!!
何だか複雑な乙女心です(笑)